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「あの人はつまりこんな風な人なんだわ。こんな風に――」
「――?」
「ね、どこも悪くない。だが、その丈夫な身体の中に虫が巣をつくつとる。いゝかね、心臓病とか腎臓病とかいふやうなものではない。虫を駆除する、つまり身体から出してしまへばあんたの身体はもと通りぴんぴんして来る。悪い虫だが、とつてしまへばよいのだから、他の病気よりは性質はいゝと云ふことになる。――判つたかね」
と、何か文句にならないことを口の中で云つて、もう一度低いお辞儀をかへした。
「相手は誰です?こゝの御隠居ですかい」
「えゝ、このたびこちらへ戻りまして、仲通りに開業しました高間房一ですが、つきましては一寸御挨拶に――」
「その姿は見えないのですが……。」
「あゝ、さうか。ふうん」
と、舌ざはりの悪いものでも口にしたやうな調子で、練吉はぽつんと云つた。
と、徳次は叮寧にならうとして一種奇妙な言葉づかひになりながら、
今泉にはやつと徳次の考へていることが判つたので、熱心に説明した。
「本当も本当でないもありやしませんよ。財産譲渡無効、その返還を請求したのだよ」
「うん、おれもこないだ通り合せたんだが、前を山支度の娘が寵をかついで歩いているんだな、するとやつぱり大声でからかつとつたよ」